「もうあの席には行かなくていいから。怖かったろ?」

「いや、あの…」

「ごめんね。ああいう席には最初から男が行けば良かったね」

「いや、そうじゃなくて、先輩…」

「ん?どうした?」

「“俺の彼女”って…」

「ん…?あぁ!ごめん!咄嗟に、ああでも言わなきゃしつこくされたら困るだろ?」

先輩が慌てて早口で言う。

そんな先輩を見ていたら、笑いが込み上げてきた。

「もう、びっくりしました」

「ごめん。本当の彼氏に失礼だよな」

「いや、でも…しょうがなかったっていうか…ありがとうございました。助けてくれて」

「うん…。助けられて良かった」

それから渚先輩とは業務的な会話を何度か交わしたけれど、先輩はどこか少し気まずそうだった。

私は本当に困っていたし、助けてくれて嬉しかったのに、逆に先輩を困らせてしまったみたいな気がした。