「連絡先交換くらいならいいよな?」

「同意の上ならってやつ?」

「ねー、お姉さん、聞いてるー?」

ここでバイトを始めて、こういうことは初めてだった。
こんな人達が来店した記憶も無い。

でも、もし地元の人だったらどうしよう。
どこかでバッタリ会ってしまったら。

色んなことが脳内を駆け巡って、声が出せなかった。

「お客様、申し訳ございません。スタッフが何か不手際を…?」

「え?いや、誰…」

青がセルフサービスの水をゴクッと喉を鳴らして一口飲みながら、私の背後を見た。

振り返ったら、渚先輩が左腕にトレンチを挟んで立っている。

「こちらのスタッフの教育係をしております。何か失礼があったのならお詫びを」

「いや、別に」

「なんでもねーよ。俺らと遊ぼうよーってからかってただけー」

派手髪三人がつまらなそうに視線を外す。

「そうでしたか…。それでしたら、お邪魔をして申し訳ございません。でも、お願いします。この子、俺の彼女なんで誘わないでもらえますか?嫉妬しちゃうんで」

「え?」

渚先輩が愛嬌たっぷりの表情でニコッと笑う。

派手髪三人達は「おー。お兄さん、かっこいいじゃんー」とかなんとか言いながら、何故かご機嫌になった。

それぞれのオーダーを無事、渚先輩が取って、その席から手を引かれて離れた。

そのまま休憩室に連れていかれる。