「あーあ。俺らってタイミング見計らうの下手なのかもな」

「そうかも」

「…食べる?アイス」

「うん」

一緒にクーラーボックスの前に行って、アイスを選んだ。

私はグレープ味のアイスに即決したけれど、その日の朔はすごく真剣に悩んで、結局私と同じのを買った。

コンビニが涼しかったから、外に出たら余計に暑くて、出入り口を塞がないように横にズレて、コンビニの看板が付いた屋根が作る少しの影の中で二人でアイスを食べた。

みるみる溶けていくアイスがポタポタと足元に落ちたけれど、不快にはならなかった。

「海、行けなくて残念だったな」

「んー…、うん。そうだね…」

「女子達で水着買いに行ったんだろ?」

「え…うん、そう」

「でもお盆が過ぎたら海には入れなくなるもんな」

「クラゲが増えるもんね」

「引きずり込まれるって言うし」

「何それ、ホラー?」

「聞いたことない?お盆が過ぎたら死者の世界の釜が開いて、引きずり込まれるって」

「おばあちゃんが言ってたかも」

「はは。俺はおじいちゃんか」

「そうかも」

クスクス笑っていたら、朔が握っている棒からボトっと残りのアイスが地面に落ちた。

「あーあ。あと一口だったのに」

さほど残念そうでもない声で朔は言った。
熱いアスファルトに落ちたアイスは、一瞬でただの液体になった。