外を歩き慣れていないからか、雪のせいか分からないけど、とてつもなく長い距離を歩いたような気がする。
それでも奏斗くんは見当たらない。
肉球の感覚がなくなってきた。
雪の日は思っていた以上に大変な天気だった。
奏斗くんが休みたそうにしていたのは、寒さのせいだけじゃないって、今なら分かる。
気づくと、ここがどこだか分からない。
迷子になっちゃったのかな…
歩いても歩いても同じ道。
私の頭の中で最悪の状況が浮かんだ。
もう、奏斗くんに会えない?
もう、あの部屋には戻れない?
わーん、と泣きたくなる。
本当に泣いてしまおうかと思ったとき、奏斗くんの声が聞こえた。
「休校になるなら朝から休みにしろって思わない?」
思わず奏斗くんのもとに駆け寄りそうになったけど、隣には誰かいるみたいだった。
「まあまあ、雪の中歩くのも楽しいじゃん」
隣には女の子がいた。
髪が肩くらいまである、小柄な女の子。
可愛くて、優しそうな女の子。
こんなこと思いたくないのに、奏斗くんの隣が似合う女の子だと思った。
その女の子と話す奏斗くんは、これまで私が見たことない顔だった。
私の知らない少し大人な顔をして、奏斗くんは楽しそうにお喋りしてる。
私とお喋りしてるときとは違う顔。
同じ言葉で話せることが、とても羨ましく思った。
その場に立ちすくんでいると
「あー猫ちゃんだ!」
女の子は私の方を見ている。
奏斗くんは私を見て「なんで?」って顔をしていた。
私はいたたまれなくなって、元来た方向に一目散に走った。
遠くから私の名前を呼ぶ奏斗くんの声が聞こえた気がしたけど、気にしないで走った。
なんとなく、あの女の子と3人で過ごすのは嫌だった。