とても寒い夜だった。
私は柔らかくて厚い毛で覆われているから、冬でも体が温かい。
でも足裏は冷えてしまうから、たまに肉球がひんやりしていることがある。
奏斗くんは、そんな私の肉球を触ると「冷たっ!」と言いながら手で温めてくれる。
そんなところも大好き。
いつものように奏斗くんと一緒にベットに入る。
奏斗くんは寒がりみたいで、お布団に入ったばかりの手や足先はとても冷たい。
そんな冷えた身体を温めるようにして、私は奏斗くんに、くっついて眠る。
「ミヤは可愛いな」
いつものように奏斗くんは、私を落ち着かせる声で、大好きな言葉を囁く。
猫である私を『可愛い』って言ってるのは分かってる。
分かっているけど、胸のドキドキは止らない。
数分経ってから、すやすやと規則正しい寝息が聞こえた。
今日も勉強や部活で疲れたのかな。
奏斗くんと一緒に過ごせる日々が、とても幸せ。
だけど、いつか別れが来てしまう。
きっと奏斗くんより私のほうが早く死んてしまう。
そんなこと、考えただけで怖くて、苦しくて、逃げたくなる。
ずっと一緒にいられる方法があればいいのに。
私にも人間の言葉が喋れる力があればいいのに。
そんなことを考えていた。