お風呂からあがった奏斗くんは、頬が桜色に染まっていて、心地よさそうだ。
「あれ…全然ご飯食べてないじゃん」
濡れた髪を乾かすために、首にタオルを巻いた奏斗くんが心配そうに、私の顔を覗き込む。
奏斗くんに彼女ができたところを想像したら、何も食べたくなくなっちゃった。
それに、彼女と楽しそうにしている奏斗くんの顔を想像しちゃうから、今は奏斗くんの顔を見たくない。
「ふん」と言いながら、奏斗くんのもとを離れると、奏斗くんは「おい」と言いながら私を抱き上げた。
「もしかして叔父さんが、彼女が〜とか言ってたから拗ねちゃった?」
どうして私の考えていることが分かるんだろう。
「俺はミヤがいてくれれば、もう充分楽しいんだ。ずっと一緒にいような」
くすぐったいような、嬉しいような、温かい気持ちになった。
こんなこと、私以外の人には言わないで。
奏斗くんをずっと独り占めしていたい。
「私も奏斗くんがいれば、それだけで幸せだよ」と言い、奏斗くんに頬ずりをした。
奏斗くんは私の頭を大切そうに優しく撫でる。
奏斗くんに優しく撫でられると、私も優しい気持ちになれる。
不思議な手だな、とつくづく思う。