「ね、いつもみたいにして」
そう言っていつもみたいに奏斗くんの腕に、すりすりしてみた。
奏斗くんは私を抱き寄せて、頭を撫でる。
いつもと同じことをしているはずなのに、いつもより近くに奏斗くんを感じるような気がした。
「なんか言ってよ」
いつもだったら、かわいいね、と言ってくれるはずの奏斗くんが今日は何も言ってくれない。
やっぱり少し、素っ気ない。
「なんかって何?」
気のせいか、奏斗くんの顔が赤い。
もしかして、照れてるのかな。
「かわいいね、とか」
「かわいい、ね」
奏斗くんは、小さな声で囁いた。
やっぱり、奏斗くんの様子はいつもと違う。
私の心臓のドキドキもいつもと違う。
ドキドキして眠れないかもしれないと思っていたのに、気づいたら眠っていた。
どんなにドキドキしても奏斗くんの安心感は世界一で、私を心地よい空間に連れて行ってくれる。
私は前も今も変わらず奏斗くんのことが好きだけど、奏斗くんは私のことどう思っているのかな。
少しは女の子として意識してくれるようになったかな。
せっかく奏斗くんの恋人になるチャンスをつかんだのに、もしうまくいかなくて、奏斗くんが他の女の子と付き合っちゃったら…
猫のときの私よりも、今の私のほうがショックを受けちゃうような気がした。