「はい、終わり」
気がつくとドライヤーが終わっていた。
思っていたよりもドライヤーの音が気にならなくて、びっくり。
猫が聞こえる音の感じ方と、人間が聞こえる音の感じ方には違いがあるのかな。
お礼を言って私はベットに潜りこんだ。
身体がさっぱりして、髪の毛もさらさらになって、このまま眠れるなんて、なんて幸せなんだろう。
きっと奏斗くんはこれを味わっていたから、毎日お風呂に入っていたんだ。
「俺もお風呂入ってくるね」
奏斗くんの声が聞こえた頃には、半分、夢の中に入っていた。
猫になっても、人間になっても、眠いのは変わらないみたい。
どのくらい寝たか分からないけど、ごそごそとした音で目が覚めた。
身体を起こすと、奏斗くんがベットの下にお布団を敷いていた。
「あ、起こしちゃった」
申し訳なさそうな顔をした。
「なんでお布団敷いてるの?」
「俺こっちで寝るから」
そんなこと聞いてない!
いつもみたいに頭を撫でながら、隣で寝てくれると思っていたのに!
「やだ!いつもみたいに一緒に寝てよ」
お風呂のときと同じように、足をバタバタさせる。
「そんなこと言われても…わがまま言わないでよ」
奏斗くんは困り果てている。