「美味しい?」
「うーん、まあ…」
奏斗くんは、困っている。
もしかして、お米しか掬ってないから、味気がないのかもしれないと思って焼き魚を口に運ぼうとすると、今度は断られた。
「俺は自分で食べられるから、大丈夫」
そう言って、器用に箸を使いパクパクと食べ始める。
私もあんな風にお箸を使える日がくるのかな。
ちゃんとお箸が使えないと、これから先、困るような気がする。
猛特訓しないと。
何とかスプーンで夕食を食べ終わって、お腹は大満足。
このまま、ごろごろして寝よう、と思ってベットで横になっていると
「お風呂に入らないと」
と奏斗くんが言う。
お風呂。
私はお風呂が嫌い。
お湯は温かいけど、濡れると毛がくっついて、すぐに寒くなる。
毛を乾かそうとして、たくさん毛づくろいしても、全然乾かない。
ドライヤーで毛を乾かそうとしてくれるけど、あの大きな音が苦手だった。
私の中ではお風呂=苦行だ。
奏斗くんは毎日お風呂かシャワーを浴びている。
ってことは、人間になった私もお風呂には毎日入らないといけないってこと…?
そんなの絶対に嫌。
「お風呂入りたくない」
私は駄々をこねるようにして、ベットの上で足をじたばたさせた。