「お箸使うのは難しいよね」
そう言い、奏斗くんは私を抱き寄せるようにして腕をまわし、私の右手を後ろから支えた。
いつもと同じ近い距離なのに、今日はいつも以上にドキドキする。
「こうやって、……こう掴む」
奏斗くんが触れる、私の右手が熱い。
ふと左を見ると、私の右手を真剣に見つめる奏斗くんの顔が近くにある。
新鮮なシチュエーションで、思わず奏斗くんの顔を見つめる。
「ミヤ?聞いてる?」
ああいけない。
奏斗くんに見とれてた。
「分かんないから、あーんして食べさせてよ」
このまま近くでお箸の使いかたを教えてもらうのもいいけど、お腹がすいた。
再びお腹が、ぐぅーと鳴る。
「仕方ないなぁ」
奏斗くんは私の手をパッと離した。
もう少し、くっついていたかった気もする。
「ちゃんと箸の持ち方覚えるんだよ」
奏斗くんはそう言って、箸で掴んだ焼き魚の身を私の口元に運ぶ。
「ありがとう、奏斗くん好き」
そう言って、口元にある焼き魚をパクっと食べる。
美味しい味が口中に広がる。
ご飯を、口いっぱい食べたくなる。
「奏斗くん、お米食べたい」
「はいはい、ミヤは人間になっても俺のお世話が必要なんだね」
優しい顔で笑う奏斗くん。