「嫌なの?もしかして、人間になっちゃったから、ミヤのこと嫌いになった?」
人間になってから、奏斗くんに嫌われちゃうことは想像していなかった。
そうだよね、奏斗くんにも好みのタイプとかあるよね。
思わず涙が溢れた。
その涙を奏斗くんは優しく拭う。
「嫌いになってないけど…突然のことで頭が追いついてこないんだ」
奏斗くんは少し、ぽかんとしているようだった。
「奏斗くんと一緒に寝たいよ。前みたいに仲良くしようよ」
私の心からの願いだった。
せっかく人間になれたのに、奏斗くんと離れちゃうくらいなら、まだ猫だった時の方がいい。
「うん、わかった」
奏斗くんは真剣な表情で私をじっと見た。
奏斗くんの言葉に安心しながらも、奏斗くんに見つめられるとドキドキしちゃう。
「とりあえず、ご飯を食べよう。ミヤはもう猫じゃないから、カリカリご飯は食べないの?」
せっかくだから、人間用のご飯が食べてみたい。
「奏斗くんと同じご飯が食べたい」
「分かった。カップ麺だと味気ないから、今日は俺が作るね」
嬉しい。
奏斗くんの手作り料理。
奏斗くんはよく自炊する。
作ったお料理からは毎回いい匂いがして、思わずよだれが出る。
猫の頃は、『食べたい』とおねだりしても、『しょっぱいから』と言って食べさせてもらえなかった。
ずっと食べたかった奏斗くんの手作りご飯。
人間になれてよかった。