幌延さんは力無く微笑んだ。
「ええ、疑ってます」
私は正直に言った。どう考えても怪しすぎる。犯罪にでも加担させられるんじゃないかと不安しかない。
行方不明になったお姉さんの代わりになってお祖母さんを慰めてほしい、だなんて話が出来すぎてる。
「私、実はこういう者です」
幌延さんはそう言って、私に名刺を差しだした。両手で丁寧に渡されて、私も軽く頭を下げながら両手で受けとる。
「幌延商事って、あの」
「ええ、“あの”幌延商事です」
幌延さんが苦笑する気配がする。私は名刺を持つ手が震えないようにするので必死だった。
……いや、まだわからない。名刺だけならだれでも作れる。
「失礼ですが、調べても?」
「どうぞ」
私はスマートフォンをバッグから取りだして、幌延商事のサイトを開く。そこから役員紹介のページをタップし、副社長の顔写真を見つけた。
目の前と同じ顔がそこにある。写真の下には名前と肩書きが記載されていて、それはどれだけ見ても、
〝副社長 幌延 純仁〟
と表示されていた。