「では、契約内容の更新ということで」


 私が冗談めかして告げると、幌延さんも笑って応じた。


「そうですね、具体的に記載するとしたら──」


 幌延さんはマガジンラックにあるメモ帳とペンを取り、私の横に並んで座った。ほど良い弾力のスプリングが揺れて、右腕のあたりにぼんやりした温かさが触れてくる。


「幌延蝶子とは、必ず幌延純仁と前田有希子の2人で接触すること……それから、幌延純仁の出勤時には、前田有希子は必ず同行すること……」

「それと、お互いにフォローしあうのも一応入れておきましょう?」


 たった2人の密約とはいえ──ううん、だからこそなにごとも明文化しておいたほうがいい。後になってから揉めてしまう可能性が少しでもあるなら、無くしておくべきだ。

 私たちは、いわば同士のような関係だ。表面上は雇った側と雇われた側だけど、蝶子さんを元気したいという目的は同じ。

 そのためには、どちらかが一方的にがんゔぁるのではなく、お互いにこうして話しあい、協力していく必要がある。


「私が冷や汗をかいたときみたいに、ですね」

「あれで大丈夫でしたか?」