こちらになにかを訴えるような動きはない。安心して腰を上げる。
「純仁、食器の場所って変わってない?」
「いいよ、姉さんが探すとぐちゃぐちゃになるんだから」
「そう言わず姉さんに任せなさい!」
「いいって!」
亜純さんは不器用で大雑把なところがある。物を片付けるときや、持ちだすときにその部分が多いに表れるのだと聞かされた。
それを認めようとしないところもあるのだ……と。
「あなたたち、ちっとも変わらないわねぇ」
蝶子さんがクスクスと笑った。その笑い声に疑っているような響きはない。自然にふるまえてるみたいで、心の中で胸をなで下ろした。
「祖母ちゃん、悪いけどご飯お願い。俺は姉さんと食器持ってくるから」
「ええ、ちょっと待ってね」
蝶子さんは「エプロン、エプロン〜♪」と不思議な鼻歌を歌いながら、軽やかな足取りで奥へと消えていった。
幌延さんは鍋敷きにすき焼きを置くと、私にこっそりとささやく。
「その調子です」
「ありがとうございます」
お互いに微笑みあって、一緒にキッチンへと向かう。カトラリーの場所は幌延さんに教わって把握済みだ。