うちのおばあちゃんとはだいぶ違うなぁ……。

 私は自分の祖母を思いうかべた。彼女は愛情深いが厳しい人で、私がイタズラするとおっかない叱責がすぐさま飛んできた。

 いつもキリッとしていて、蝶子さんみたく表情がころころ変わったりはしなかった。


「亜純、どうかした? 疲れてる?」

「ん、ううん。こうして歓迎されるのが夢みたいだなって……」

「ここは貴女の家よ? 歓迎するに決まってるでしょう」

「5年も連絡しなかったんだし、絶対に怒ってるって思って……」


 コの字型のソファー、その窓側。

 そこがこのリビングでの、亜純さんの定位置。

 私はそこに座って、蝶子さんとおしゃべりしていた。
 といっても、私は聞き役に回って蝶子さんのおしゃべりに相づちを打っているだけだ。

 幌延さんはキッチンにこもってしまった。蝶子さんいわく、得意料理のすき焼きを作るらしい。美味しそう。

 今のところ変な臭いがするとか黒い煙が出てるとかはないし、大丈夫……だろう、うん。

 私の恐々とした思いなどつゆ知らず、蝶子さんはおっとりと亜純さんがいない5年間の話をしてくれた。