「おばあちゃん、どうしてる?」
おばあちゃんは地元で診療所を開いている。80代とは思えないほど元気な人だ。
ピンと背筋を伸ばし、大股でさっそうと歩く姿は活力がみなぎって美しい。その姿に影響される患者さんも多く、どうすればそんなに若い人のように動けるのか、と相談されているのをよく見かけた。
そんなおばあちゃんの元で私は育った。忙しい両親に代わって、おばあちゃんは診療所兼自宅でずっと私の面倒をみてくれた。
寂しさはあったけど、患者さんたちにすごくかわいがられて、甘やかされた。
「有希ちゃんは看板娘だねぇ」
「うちも早く有希ちゃんみたいな孫がほしいわぁ」
診療所にやってきたお爺さんやお婆さんに代わるがわる抱っこされながらお菓子やお小遣いをもらったりしていた。
今思えば、あの診療所は地域のコミュニティスペースとして機能していたように思う。
地元は過疎化がだいぶ進んでいると聞いてはいるけど、あの診療所は今も患者さんたちのおしゃべりで賑やかに──とまではいかないけど、そこそこやっていけてる……よね?
「実は……あんまりよろしくない。診療所にくる人が減って、経営が難しくなってきてるんだ」