藍良くんは私を助け起こしてくれて、カバーについた泥も綺麗に払ってくれた。
そして、見たこともないような冷たい視線をあの子たちに向ける。
「もう一度聞くけど、何してたの?」
「あ、いや、その……」
「ちょっとふざけてただけってゆうか……」
「おふざけにしては度が過ぎるんじゃない?」
「……」
三人とも泣きそうな表情で黙り込む。
「僕の好きな子を傷つけるのはやめてくれるかな」
えっ……、藍良くん!?
「僕が一方的に紅ちゃんに恋してるだけだよ」
「……っ!」
「今はまだ、ね」
藍良くんは甘い甘い小悪魔みたいに笑う。
その笑顔は、アイルくんにはない笑顔だった。
助けてくれたのはアイルくんと同じだった。
でも違う。
私、漫画を読んだ時よりずっとドキドキしてる――。
「紅ちゃん、行こう」
「えっ」
藍良くんはさりげなく私の靴を持って、私の手を引いた。