この子たちはどうして身勝手なことができるんだろう?


「藍良くんは、ものじゃないです。藍良くんは藍良くんです」

「はあ?」

「藍良くんは自分から興味を持って読みたいって言ってくれたんです。返してください」

「こいつ生意気なんだけど!」

「っ!」


 勢いよく突き飛ばされて、私はそのまま尻餅を着いた。
 水道の近くで地面がぬかるんでいたから、スカートが汚れてしまう。


「あ……」

「自分が藍良に好かれてるとでも言いたいの?調子乗んなブス!」

「ほら返すよ!」


『甘恋。』はぬかるんだ地面に向かって投げ捨てられた。


「あっ……!」


 急いで拾ったけど、アイルくんのカバーが泥で汚れてしまった。
 自分が泥だらけになったことよりショックだった。


「ひどい……」

「酷いのはそっちでしょ。勝手に抜け駆けするからいけないのに」

「何してるの?」


 あれ、うそ、なんで?


「あ、藍良!?」

「何してるの?」


 どうして藍良くんがいるの……?
 先に帰ったはずなのに。