すごいな、藍良くん。ファンクラブがあるなんて。
「アイルくんと同じだ!すごい!」
「どこに感動してんだよ」
「かわいそうな藍良。漫画の中の王子に負けてるなんて」
「負けてるなんてないよ。そもそもアイルくんは唯一無二の存在だもん」
「わかったわかった。でも紅、気をつけなよ」
気をつける?何が?
「藍良のファンって過激派多いみたいだから。紅のこと妬んで嫌がらせしてくるやついるかもしれない」
「そうそう。のんきにアイルくんにときめいてる場合じゃないからね」
「う、わかった」
『甘恋。』でもアイルくんのファンに嫌がらせされる話があった。
でもアイルくんが助けてくれたんだよね。
思い出してもアイルくん、素敵だなぁ!
そんなことを考えていた私は、本当にのんきだったと思う。
ちゃんと若菜ちゃんもちいちゃんも忠告してくれたのに。
「あ、あれ……?」
下駄箱の中の靴が、泥まみれになっていた。
靴の中にも泥や小石が入っちゃってる。
あれ、これってもしかして……
「紅ちゃん!」
「あ、藍良くん」
咄嗟に下駄箱の扉を閉めた。
「一緒に帰ろ」
「あ、ごめんね。今日は用事があるの」