「あの、これ…落としたよ」
声をかけられて振り向くと、長い前髪に覆われた顔があった。
うわ、もじゃもじゃお化け!と口にしなかった自分を褒めたい。
ちゃんと話したことがないとは言え、小中高と同じ学校になったから流石に耐性がついたかな。
「あ、ありがと」
「うん」
持っていた上履きを下駄箱に押し込んで、差し出されたストラップを受け取ると、小さな返事が聞こえる。
彼の名前は、確か…新原玲央、だったっけ。
前髪の隙間からメガネのフレームが見えるけど、それでちゃんと見えてるのかな、といつものことながら疑問に思う。
「おい新原~、一緒に帰ろうぜ!この前みたいに奢ってくれよ」
「わっ」
「ちょっ!?」
派手な人達が新原くんの肩を押して、彼がこっちに倒れてきた。
びっくりして目を瞑ると、背中が下駄箱に衝突する。