『すみませんこそこそしたつもりはないんで、


ただ学校の道具取りに来ただけですから。


桃のお母さんには承諾済みだし、


唯花さんも、桃がいない方がいいんでしょ。


俺には桃が必要で、離れたくないんで。桃行くぞ!』


遠矢が繋いだ手を引っ張る。



私はお人形みたいに、黙ったまま二人の横を通り過ぎようとした。



お姉ちゃんは私の顔も見なかった。



宗が私に、『桃は幸せなのか?』小さく呟いた。



私はコクりと頷いて宗の横を通り抜けた。



玄関を出て遠矢が、大丈夫か?と聞いた。



私は遠矢に心配かけたくなくて、笑って大丈夫と答えた。



遠矢が頭を小突く。



『バカ俺に隠すな。』



その言葉に涙が溢れた。



『素直でよろしい。』



遠矢が抱き締めてくれた。


「早く遠矢のマンションに帰りたい。」



『そうだな。買い物は明日にするばいいし、


コンビニに寄って帰ろう。』