ディゾール様の言葉に、私は気づいた。
 確かに、この資料をシャザームが残しているというのは、おかしい。それを残しておく意味が、彼女にあるとは思えないのだ。
 私は、図書館などで魂奪取魔法に関する記述は調べてきた。だから、知っている。そこに書いてあることは、今でも残されている記述であるということを。
 それなのに、彼女はわざわざ古いこの紙を残している。普通に本の一つでも買えばいいというのに。

「これが、暗黒の魔女自身が記したものであるというなら、納得は行く。自分の記述を残しておくことに価値も見出せるだろう。だが、これは別人のものだ。それをわざわざ残しておくだろうか」
「でも、もしかしたら、ファルーシャの体で書いているから、筆跡が違うということでは?」
「いえ、私とシャザームの字は違います。だから、この資料は別の人が書いているはずです」
「別人が、魂奪取魔法の記述をしていて、それをシャザームが残している……どういうことなのかしら?」

 謎の資料に、私達は少し混乱していた。
 シャザームは、どうしてこんなものを大事に取っているのだろうか。
 何の意味もないとは考えにくい。この古い資料をわざわざ残していることには、何かしらの意図があるはずだ。