「む……?」
「ディゾール様、どうかされましたか?」

 そこで、ディゾール様が何かを訝しむような声をあげた。
 もしかして、目当ての記述が見つかったのだろうか。そう思って、私は彼に声をかけてみた。
 ただ、彼の表情を見て理解する。私の期待しているものが見つかった訳ではないと。

「これを見てみろ」
「これは……魂奪取魔法に関する記述ですね。でも、これは最近書かれたものではなさそうですね……」
「ああ、恐らくは過去の資料だろう」

 ディゾール様が持っていたノートには、古い紙が貼りつけてあった。
 それは、魂奪取魔法に関する研究の記述だ。恐らく、過去に誰かが記したものをシャザームが貼り付けたのだろう。
 これがあるということは、魂を結合する魔法に関する記述も見つかるかもしれない。シャザームが、既存の魔法のことも記録しているのだから、その可能性は低くないだろう。

「この資料は、どのようなものか。お前は、覚えているか?」
「いえ……わかりません。ただ……これは、シャザームが書いたものではありませんね」
「ええ、確かにそうよね。他のものとは字が明らかに違うもの」
「だが、ここに書いてあるのは魂奪取魔法に関する記述だ。とても基本的なことが書いてあるだけ……そんなものを、どうして暗黒の魔女は残している?」
「え?」