真っ赤になってわたわたと慌てるあたしに、新庄くんが小さく笑いながらため息をついた。



「……ここじゃ、なんだし、ね」

「え?」

「そういう時の柏木さん、俺だけが見たいし」



そ、そういう時のあたしとは?!

ど、どいういうあたしですか?!


さっき、あたし、新庄くんにもっと近づきたいって思って。

それで、それで、唇がもう少しで……、っ!!!


自分の行動を思い返して、かぁっと全身が熱くなる。

ドキドキ鳴りやまない心臓の音に眩暈をおこしかけていると、新庄くんがあたしを抱きしめていた腕の力を緩めた。



「……続きは、また今度、ふたりの時にね?」

「っ、」



耳元にそぉっと。あたしだけに聞こえるふわふわの声。



「ははっ。ほっぺ真っ赤」

「だって、あのっ、」

「かわいい」

「~っっ!!」



蕩けたように笑った新庄くんに、さらに心臓がきゅぅきゅぅと鳴って、大好きが増えていく。



あたしから離れて、歩き出そうとする新庄くん。

その追いかけているばかりだった背中に、手を伸ばす。


くんっ、と掴まえたブレザーの裾。驚いたように振り返る、その視界に映れること。



「……また、今度……、ですね」

「っ」

「……いつ、かな」

「!!!」




……ずっと、他人から向けられる視線が怖かった。

上手く人の中に入っていけなくて、身構えてばかりの自分が嫌いだった。


でも、あなたに出会って。

あなたがあたしに寄り添ってくれたから、あたしは変われたの。


あなたのとなりにいられる幸せ。

あなたがとなりにいてくれる幸せ。



幸せに幸せが重なって。

新しい世界が始まって。



あなたを想うきらめきを宿した、この世のたったひとつの純粋な色が広がっていく。