胸が一気に苦しくなって息が詰まった。

うまく言葉が出なくて。

それでも、この気持ちに気づいたのは……。



「……安達先輩とは、一緒に帰ってないです」

「……え? でも……」

「一緒に帰れないって伝えて、校門のところで別れました。あたし、えみりちゃんの話を聞いて……、わかったんです」



一緒に帰りたい、一緒にいたい。


―――― 他の人といないで。


あたしがそう思う相手は……。



最初から、ずっと。

憧れなんかじゃなかったのかも、しれない。


あなたに近づきたくて。

あなたをいつも見つめていたくて。



「……新庄、理斗くん」



声が震えた。

だって、その名前は初めて会った時から、あたしの特別だった。


最初は、背中を見つめるだけでよかった。

あなたの世界に入れてもらいたいだなんて願うだけ、無駄だと諦めていた。


でも、本当は……、あなたの世界に入れてほしくて。


あなたが私を見てくれたことが嬉しくて。

その声が、あたしにだけ向けられるたびに、初めての感情が広がって。

あなたと過ごす時間が増えるごとに、このまま終わらないでと願って。



じわり滲んだ視界に、想いが溢れる。


あたしも、伝えたい。

新庄くんがあたしの世界をいつだって変えてくれる。

知らなかった彩をくれた。


あなただけが……。



「……あたしも、です、」



ゆらゆら揺れる視界の中で、新庄くんがあたしを見つめてくれる。

それだけで、もっと胸がいっぱいになって。



「新庄くんのことが、すき……」



溢れた気持ちと同時に落ちた涙ごと、新庄くんの腕の中に抱きしめられた。