駅前の繁華街を探す。俺らの高校の生徒は、この繁華街で寄り道することが多い。


きっと、柏木さんたちもここにいるんじゃないか。


そんな期待を込めて、1軒1軒覗く。

怪しまれようと迷惑そうな顔をされようと、店員さんに柏木さんと安達先輩の特徴を伝えて聞いて回った。

あんなに可愛い柏木さんだし、安達先輩だってイケメンだし、目立つだろうから早く見つけられるはず。


なのに、期待もむなしくなんの手掛かりもないまま、その外れにある公園まで来てしまった。



まさか、電車でどこかに出かけた……?

そんなに仲良くなってるのか……?


また、不安が頭をよぎる。

脳裏に浮かぶのは、楽しそうに話すふたりの姿。

俺だけが知っていたはずの愛らしい笑顔を、独り占めする安達先輩。

安達先輩の優し気な視線に、頬を赤らめる柏木さん。俺の入れないふたりだけの空間。


その想像は、想像ではない気がして。

やけに解像度のいい自分の脳みそを恨んでいると、さっきまで柏木さんを見つけることだけに動いていたはずの足が急に重くなった。


首筋を伝う汗が気持ち悪い。

息が切れて、喉が焼けつくように熱を持って痛い。

けほっと空虚な咳が喉をつく。


立ち止まりそうになる足を無理やり動かして、ふらふらと公園の入り口に立ち中を見渡した。


……やっぱ、いないか。


落胆する気持ちを飲み込んで、もっと違う場所を探そうと踵を返した時。



「(……え?)」



振り返った先、少し離れた場所にある電柱。

その陰で、なにかがサッと動いた。


身体は電柱に隠れているのに、夕陽に照らされ伸びた影がその存在を教えてくれる。


……いつも、いつも。あれで隠れているつもりなんだから。可愛すぎなんだよ。


くすり笑いが漏れたのは、きっと泣きたかったからだ。

心の真ん中に浮かぶ気持ちは、もうわかっている。きみでいっぱいになる。


伝えたくて。

その陰に、一歩近づく。

アスファルトを蹴る俺の足音がやけに大きく感じた。

その音に、影がピクリと揺れる。


二歩近づく。

熱で爛れていた喉の痛みが、どこかへ消えた。

慌てたように、影がわたわたと大きく揺れて……。


もう我慢できなくて、残りの距離は一気に走って近づいた。