はっ、と気が付いたときにはもう遅くて。

目の前には、呆気にとられたように動きを止めた金井さん。

背中には、他のクラスメイトの視線からの冷ややかな突き刺さる。


どくどくと嫌な音が鼓膜のすぐ内側で鳴り響く。

冷水が体中を流れるように、心臓が凝り固まっていく。



「(か、身体が動かない……)」



逃げ出したいのに、足が竦む。


ああ、やっぱり、あたしには無理だったんだ。

新庄くんのようになりたいなんて、高望みすぎたんだ。


新庄くんと友達になれて、彼が一緒に練習してくれて、あのふたりの時間が楽しかったから、勘違いしてしまった。



「(あたしは、結局、変われないんだ……)」



いつもそうしていたように、大嫌いな自分への気持ちを心の奥底に沈めて、表情筋にあたし史上最大の力をこめようとした時、視界の端っこに影が差した。


少しだけ陰った教室の照明。

その人影は、あたしに突き刺さっていたみんなからの視線も遮ってくれて。



「……確かに。それは、めちゃくちゃ悲しいじゃんね」



いまや耳に慣れた声に見上げる。その視線の先の人と目が合って、じぃんと瞼の奥が重くなった。



「っ、」



あたしにだけに聞こえるように「大丈夫だよ」と囁く優しい眼差し。

小さく頷いて、安心をくれる新庄くんがいた。