褒めて伸ばそうとしてくれているのかな……。



『いまの柏木さん、すげぇいいと思うし』
『可愛くて、もっと話したいって思う』



思い出すと、さらに頬に熱が通いだす。


……新庄くん、あたしに気を遣ってくれている。

全然、自然にお話しできないのに……。そんなふうに言ってもらえること、ひとつもできていないのに。


でも。


胸の中に優しい光が広がるような、それでいてきゅっとちょっとだけ苦しくなるような……。


新庄くんが「ん?」と首を傾けると、柔い笑みがいっそう深くなって、ふにゃりと目尻が下がった。そこから溢れた優しさが波及するように、あたしの心臓が初めて感じる鼓動を刻むのは、どういう仕組みだろう。


……まだ、新庄くんと友達になって日が浅いからだろうな。こんなふうに、誰かと一緒にお弁当食べたこともなかったもん。



「(やっぱり、新庄くんは余裕そう……)」



膝の上に広げているお弁当に視線を落としていると、パリッとたまご蒸しパンの袋を開ける音が聞こえた。

あたしのとなりで、肩を並べて、体温が伝わってきそうな距離で「いただきまーす」と小さくつぶやく新庄くんの声。



「(あたしだけが、まだ友達との過ごし方がわからなくてどきどきしてる……)」



それはそうだ。新庄くんは友達作りマスターである。

だからあたしは新庄先生に弟子入りを志願したのだ。


このどきどきは、初めての友達と一緒にいるってこと、プラス……



「(まさしく師弟愛だ……!)」



新庄くんは、あたしの理想とする人だもの。そんな憧れの人がとなりにいたら、きっと当たり前の現象だ。


だったらなおさら。あたしは精進しなければいけないのだ。

新庄くんに隠れてつきまとって姑息な方法で、そのワザを盗もうとしていたあたしなのに。

新庄くんは『とっくに友達なんだから』と言ってくれて、人と話す練習台にまでなってくれているのだから、成長しなければ申し訳ない。



「(ちゃんと練習させてもらって、あたしも新庄くんみたいに誰かを笑顔にさせられる人になりたい!)」



むんっ!と心の中で気合いを結ぶ。