……あー、まぁ、違う意味でも全身全霊で泣いた。


だって、友達って……。俺になりたいって……。

俺をストーカーしてたのって、そういうことだったのかって正直がっかりしたけど。



「(……俺は友達でいいなんて、思えない)」



俺しか知らない柏木さんが増えていくたびに、いっぱいになる。

初めて触れた小さな肩、しなやかな髪、ささやかな甘い花のような香り、驚いて丸くなった瞳、小さなぽってりとした唇。

そういう、彼女の魅力。全部、俺だけのものにしていたい。


でも、教室で涼やかな表情を崩さない彼女のほんとの気持ちを知ってしまったから。



『あのさ、俺で練習したらいいよ』

『……?』

『俺になりたいっていうの、すげぇ嬉しいけど。柏木さんは柏木さんだから。いいところいっぱいあるじゃん?』

『っ』

『表に出すのが苦手なだけだろうから』

『……、』

『それ、伝える練習、俺でしたら?』

『え、あの……で、でも、そんなの悪い、』

『悪いとかないよ。柏木さんと俺、とっくに友達なんだから』

『ひゃっ、101番目、あ、あたしで、いいんですか?!』

『友達に番号とか順番とかないし』

『!』

『俺にとって柏木さんは大事ってことだけ』



うるっと瞳を潤ませた柏木さんに、俺の本心は絶対に伝わてない。


ただ、俺のマフラーに顔を埋めるように『ありがとう』とつぶやいた柏木さんは、心臓撃ち抜かれるどころの騒ぎじゃなかった。

可愛さの乱反射で普通に死んだ……。返してもらったマフラーもう絶対洗わない。



それに。


「(もう、俺だって柏木さんのストーカーライフをそっと見守るだけじゃ足りない)」



柏木さんに近づきたい。

そう思ったんだ。