「いや、幽霊的なものを見るのも初めてで驚いたけど、巻き込まれたとは思ってないよ」
「むしろ飛び込んできたもんねえ、君」

 細い目をさらに細める委員長の米倉達真は、楽しげに二人へと歩み寄る。

「目眩があったんだっけ。在学真っ只中の二年生でっていうのは珍しい気がするけど、それ、見えるようになる兆候だったんだろうね。けど見えるようになって、力が発現して、その瞬間から参加してくれるなんていうのは、さすがになかなかないことだよ」
「センパイ、早速スカウトしようとしてる……」
「もちろん! 人手はいくらあっても足りないくらいだもの」

 鬼に対するには当然見える者であることが必須だ。それは世間でいう霊能者に似て非なるもの。
 特別執行委員会に所属する面々のほとんどは、別に幽霊が見えるわけではない。ただ「鬼が見え」「鬼に対処する能力がある」というだけ。

 学校の敷地内に現れる鬼、敷地内限定で不可思議な能力に目覚める者たち。一歩校外に出れば鬼はいない、おかしなものも見えない、穏やかで忙しないだけの日常がそこにある。
 誰がそんな話を信じるだろう、――当事者以外。