「…………それだけ切って……まだ満足してないの?」

「…………………」

そして俺は一気に香音に近づきカッターを持っている手を抑えた

「…………ようは、香音が切る前に近づけばいいんだな」

「……………………」

「ほら、カッター離せ
 危ないから」

「……………嫌」

「…………無理やり取るぞ
 それでもいいのか?」

「…………嫌」

「自分で離すか俺に取られるかどっちかだ
 選べ」

「……………どっちも嫌」

「香音!」

「何でよ!!
 もとはと言えば雄斗のせいじゃん!!」

「なら俺を怒れよ!
 自分に当たるな!」

「………………」

「離しなさい」

「………………………」

「いいから離せ!!」

そしてついに香音はカッターから手を離した

怒鳴ったせいで………香音は今にも泣きそうな顔をしている

だから怒鳴りたくはなかったんだけどな…………

「香音………俺はどんなに怒られたって、八つ当たりされたっていい
 そんなの全然許す
 でも、自分を傷つけることだけは許さない」

「……どうして………」

「どうしてもだ
 ここまで香音の心を不安定にさせたのは俺のせいだ
 だから俺を怒れ、当たるなら自分じゃなくて俺だ」