「…………山中の意見にも一理ある
 昨日の話聞いたら許せない
 あんなの、逃げ出しても怒れない」

「だったら…!」

「でもな…………香音ちゃんがここにいたら…………下山さんが………辛くなる……
 すぐに治ったとしても………こうなった原因が分からない以上、いつまた同じことが起きてもおかしくない
 下山さんは…………優しすぎる
 優しいから………自分を責めかねない
 俺でも驚いた
 こんな荒れてる部屋に…………ただ一人座り込んでいる
 まるで…………人形だよ………」

「後藤…………」

「お前だってショック受けてる
 下山さんは俺達の何倍も辛いんだ
 それなのにずっと一緒なんて………辛すぎるだろ
 下山さんにだって仕事がある、生活がある
 香音ちゃんがここにいたら………崩れる………」

「………………………」

「今までも何回も見て来たんだよ…………患者さんの家族が………どんどん疲弊していくの………
 それで結局………疲れ切って……何も出来なくなっちゃうんだよ……………
 悪循環なんだよ…………家族が疲れ切ってるのを患者本人も感じとっちゃうから………共倒れ………
 気づいた時には………笑顔も消えてるんだよ……両方から」