〜山中先生目線〜

「香音さん、こんばんは
 調子はどうですか?」

しゃがんで彼女と視線の高さを合わせる

合わせようとしても………合わない

「香音ちゃん、こんばんは
 少しお話しできるかな?」

「……………………」

「自分の名前分かる?
 教えてくれる?」

「……………………」

後藤も手を握ったりしながら何度も話しかけている


でも何も話さない

視線すら合わない


一体………彼女の目には何が映っているのだろう………

「……………山中、大丈夫か…?」

「…………似てるんだよな……あの時に………
 また…………戻っちゃったのかな…………」

「………大丈夫だ
 きっと大丈夫だから…………
 山中も、辛いなら無理するな
 俺がどうにかするから」

「………自分の責任は自分でとる
 彼女からは絶対に逃げない」

「…………そうか
 まぁでも、今回の原因は分からない
 山中せいっていうわけでもないからさ
 あまり気を負いすぎるなよ」

「あぁ…………」

「…………んでさ、俺は正直香音ちゃんは病院に戻すべきだと思う
 山中はどうだ?」

「…………ここにいさせてあげたい
 彼女が逃げ出したってことは…………相当嫌だったんだと思う
 昨日までは戻って来てほしかったけど…………これを見るとダメなのかなって
 病院がストレスになってこんな風になってるのかもしれない」