五時間ほど後。
「お疲れさま、食べてよ」
社員さんから差し出されたのは、たらスパだ。
「ありがとうございます。良いんですか?」
「うん、ちょっと麺や味付けを変えたりしてるから。感想聞かせて」
社員さんの内藤さんが言う。オーナーの息子の友達か何かの人だ。



「まもるちゃん、美味しい?元気に、なった?」
内藤さんがシンクで作業しながら言う。
「内藤さん?」
「まもるは今夜からフリーになったんです」百合耶も美味しそうにたらスパを食べている。
「話聞こえてたんだ」
「それもあるけど、ほら、泣きそうな目してたから」
内藤さんは手を休めず続けた。
「美味しいものでも、食べるに限るかなって」
内藤さんと目が合う。
あたしは目をそらして、たらスパを見つめる。
「俺も良いですか?!うまそ~!」
バイト山崎もあたしの横に座ってたらスパを食べ始めた。



たらスパ美味しかった。
「ごちそうさまでした。ありがとうございました」
内藤さんにお礼を言うと、少しだけこっちを見てほほえんだ。

内藤さんは気づいていたかな?
あたしはたらスパに涙をこぼしちゃったこと。
百合耶はたぶん気づいていたと思うけど。