「そうなったら私達に勝ち目は?」
明宏は左右に首をふった。

さすがにそこまではわからない。
ここにある武器はモップかホウキだけなのだから。

どこか他の、調理実習室に行けば包丁くらいはあるかもしれないが、それを取りに行くためには今よりももっと大変な目に遭うだろう。
教室へ戻るときには育美が一番前を早足で進んでいた。

両手でモップを握りしめているが、周囲を警戒しているようには見えない。
一刻も早く教室へ戻りたいという気持ちはわかるけれど、あれではほとんど丸腰だ。

それでも空き教室が見えてきたとき、育美の顔にホッとしたような笑顔が浮かんだ。
ついモップを持つ手の力が緩む。

片手でモップを持ち直したそのときだった。
右手にある階段から突如男のソンビが現れたのだ。

制服姿をしているけれど、それはほとんど血に濡れていて元の色を止めていない。
夏服から伸びている両腕は屈強で、すぐにレスリング部の生徒だということがわかった。
筋肉質な両腕が育美へ向かって伸びる。