「それじゃ、杉川くんもその可能性があるってこと?」
「これは映画の話だ。現実じゃない」
明宏は左右に首をふって自分の意見を否定している。

だけど、今までだってその映画の知識が役立っているんだ。
千歳にとっては無視できないことだった。
「ほんっと、最悪」

そうこうしている間に育美がトイレから戻ってきた。
青ざめた顔で口元を拭っている。
「杉川くんはまだゾンビになってないかもしれない」

さっきまでの話を聞かせると育美は一瞬目を見開いたものの、左右に首を振って嫌そうな顔を浮かべた。
「ゾンビになってなくても生きてはいないでしょ。あんただって、トイレの中を見たでしょう?」

天井まで血が飛んでいた。
あの出血量じゃ確かに助かる見込みは少ないかもしれない。

「でも、もしまだ生きてたら? このままほっとくの?」