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それからすぐに寝入ってしまったから、なにが起こったのかわからないまま朝が来ていた。
目が覚めたのは「杉川がいない!」と言う明宏の声のせいだった。

千歳が上半身を起こすと全身に痛みが走った。
硬い床の上で無理な体勢で眠ったせいだ。
あちこちが痛くて顔をしかめつつ、教室内を見回す。

育美はすでに起きていて菓子パンをかじっている。
四条姉妹は教室の隅っこで隣り合って眠っている。

杉川の姿はどこにもなかった。
「杉川くん、どこに行ったの?」

明宏へ質問した瞬間、昨日の夜見てしまった光景を思い出していた。
ハッとして育美へ視線を向ける。
育美は何食わぬ顔で朝食を続けていた。

「わからない。朝になったらいなくなってたんだ」
「……トイレ、とか?」