音はかすかであればあるほどリアリティが増していき、居心地の悪さを感じた。
気になってそっと目を開けるのと杉川が上半身を起こすのはほぼ同時だった。

「トイレ」
杉川は短く育美へ言って立ち上がる。
「え? でも廊下には……」

育美がすべてをいい終える前に杉川はモップを握りしめて後方のドアを開けていた。
そしてゾンビが教室に侵入してくるまでにドアを閉じたのだった。
その姿に育美が小さく舌打ちをしたのだった。