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夜になると電気とテレビを消してそれぞれが床に横になった。
積もっていたホコリはある程度拭き取ったけれど、床の固さだけはどうにもならない。

何度寝返りを打っても眠れる気にはなれなかった。
そんな中、廊下からはゾンビたちの徘徊音が聞こえ続けてきている。

こんなに長時間歩きまわっていても疲れないなんて、やっぱり彼らはおかしいんだろう。

千歳が何度目かの寝返りを打ったとき、なにかの気配を感じて薄っすらと目を開けた。
そこには床に寝ている杉川と、隣に座っている育美の姿が見えた。
窓から入り込む月明かりによってふたりの姿が浮かび上がってきている。

それがなんだか幻想的で、夢でも見ているような気がした。
育美が杉川の耳元でなにかをささやく。

杉川は寝返りを打ってそれを無視している。
それでも育美は諦めない。