言ったのは若葉だ。
若葉と青葉はさっきからテレビニュースを確認している。

この街ではゾンビ化した人間が増え続けていて、政府も対応を迫られているらしい。
ゾンビ化した人間が化け物ならすぐに撃ち殺すこともできるけれど、そう判断するには情報が足りないらしい。

そのため対応が遅れてゾンビが増え続けているのだ。
「あんなの化け物に決まってるのにね」

育美が持ってきた菓子パンを食べながら言う。
その言葉に千歳は複雑な気持ちになった。

確かに、人間を食べて感染させるなんて化け物のやることだとおもう。
だけど千歳の脳裏にはカオリの姿が張り付いて離れなかった。

ゾンビ化してしまってもカオリはカオリで、大切な友達だと思ってしまうのはおかしいことだろうか?
「ところで、杉川はどこにいたんだ?」

明宏からの問いかけに杉川は頭をかいて「ずっと保健室にいた」と、答えた。