それでもそれがカオリであることがわかった。
「カ、カオリ?」
思わずドアを大きく開き、名前を呼んでいた。

「バカ、やめろ!」
明宏が叫んだときにはすでに遅い。
名前を呼ばれたカオリが振り向いたのだ。

濁って目はジッと千歳を見つめている。
「カオリ、私だよ。わかる?」
「やめろ千歳。ゾンビ化した人間には何を話しかけても通じない!」

「だけどカオリは私を見てるよ? 私だってわかってるってことでしょう?」
「違う! ただ見てるだけだ。誰かなんて認識してない!」

カオリがゆらゆらと近づいてくる。
それでも千歳はその場から動けなかった。

「カオリ、お願い返事をして」
カオリが一瞬首を傾げた。