千歳の中に一抹の不安がよぎる。
このままゾンビたちが去らなかったら、私達は食料を運ぶことができなくなってしまう。

青葉たちはちゃんとやってくれるだろうか……。
そう思った次の瞬間だった。
遠くでガンガンと床を打ち鳴らす音が聞こえてきたのだ。

千歳と明宏は顔を見合わせてドアの隙間から様子を確認した。
ゾンビたちが音につられてゆらゆらと方向転換し、歩き始めている。

「いいぞ。これで教室に帰れる」
「本当だね」
どうにかミッションをクリアすることができそうだ。

そう、思ったそのときだった。
ふらりとドアの前に現れたゾンビに千歳は「えっ」と、小さく声を上げていた。

みんなと同じように青白く、ボロボロの肌をしている。
来ている制服も汚れていてあちこちに血がこびりついている。