会話しながら奥へと進んでいく。
今日はテスト初日だけれど、学校に残って勉強する生徒のために食堂は開いていたはずだ。

調理室へ足を踏み入れてみると、味噌汁のいい匂いがして食欲を刺激した。
見るとコンロの上には大鍋が置かれていて、中を確認してみると豆腐とワカメの味噌汁ができていた。

「おいしそう」
今まで食欲のなかった千歳もゴクリと唾を飲み込む。

明宏は棚からカップをふたつ拝借して、お玉ですくった味噌汁を入れて千歳に渡した。
味噌汁はすでに冷たくなっているけれど、暑い時期の今には冷たいスープみたいでちょうどいい。

「あぁ、美味しい!」
千歳が生き返ったようにつぶやく。

ギュッと目を閉じて味噌汁の味をしっかりと感じているみたいだ。
「本当にうまいな。喉も乾いてたし、全部飲み干したいくらいだ」

ここまで来ることができた安心感から、そんな冗談まで口から出てきた。
それから食堂内を調べていくとパンやおにぎりをみつけた。