育美はなにがなんでも明宏と千歳に食料を取りに行かせるつもりみたいだ。
育美は明宏の言葉に返事はせずに掃除道具入れを開けて中を確認しはじめた。

次々と取り出したのはモップやホウキだ。
「これで相手攻撃できるんじゃない?」
「こんなのが武器になると思ってんのかよ」

明宏の声が険しくなる。
人間相手なら棒で叩けば効果があるかもしれないけれど、相手はゾンビだ。
こんな弱そうな武器で立ち向かうなんて、到底できない。

「じゃあどうすんの? ここで全員で餓死する? あんたの彼女も死ぬよ」
育美の視線が千歳へ向けられる。
千歳はたじろいで後ずさりをした。
なにも言えずにいる間にも育美は苛ついたように足を鳴らす。

その様子に教室内での育美の様子が思い出された。
育美は苛立ちを感じると今と同じように足で床とトントンと鳴らす癖を持っている。