普段の育美の性格を知っているから、つい黙り込んでしまう。
「ねぇ、誰かなにか取ってきてよ。食堂に行けばなにかあるかもしれないんでしょう?」

その言葉は明らかに千歳に投げかけられている。
千歳はビクリと体を震わせて左右に首を振った。
「無理だよ。だって、廊下には沢山ソンビ化した生徒たちがいるんだから」

か細い声で反論する千歳を育美は睨みつけた。
「ソンビたちは知能が低いからおびき寄せている間に逃げられる。そうだったよね? 明宏」

今度は明宏に視線が向かった。
明宏はうんざりした様子で育美を見ると「あぁ」と、小さな声で頷いた。

この声は明らかに育美を警戒している。
「それなら、私と四条姉妹が後方のドアを開けて物音を立てる。その間に前方のドアからふたりが出て食堂へ向かうっていうのはどう?」