「例えば、教室の後方のドアを開けて物音を立てる。そのスキに教室前方のドアから脱出するとか」
「そんなの、音を立てた人が取り残されるだけじゃん」

育美がつまらなさそうな声で言う。
「例えばの話だろ? 実際にするかどうかは、わからない」

「そんな例え話聞いても意味ないし」
育美は突っぱねるように言うと目を閉じてしまったのだった。