学校の外も中もゾンビだらけで滅多に普通の生徒を見ることはなくなってしまった。
「ゾンビ映画の中ではゾンビの知能は低い。だからここにいれば入ってこられないはずだ」

ホラー好きな明宏が安心させるために説明する。
「それって映画の話でしょ? これ、現実なんだけど」

育美がバカにしたような声色で言うので、明宏は黙り込んだ。
「で、でも映画の中の出来事でも勉強にはなるかも。現実的じゃないことが起こってるんだから」

明宏を擁護したのは千歳だ。
明宏は千歳に笑いかける。
「知能が低いってことは、窓やドアを破ることができないってことだよね?」

若葉からの質問に明宏は頷く。
「そう。映画によっては少しの障害物でも乗り越えられないゾンビもいる。だから、物音を立てておびき寄せておいて、逃げることとかもできるんだ」

映画の話になって少し饒舌になる明宏に育美がふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。