聞いてきたのは育美だ。
育美は長くて細い足を組んで、こんなときでも威厳たっぷりだ。

「わからないよ……」
千歳は左右に首を振る。
教室にいた男子生徒が突然豹変して、隣の子を襲った。

そして襲われた子も、先生を襲った。
どんどん連鎖して行って、今ではもうどれだけの人数がゾンビ化しているのかわからない。

「とにかく、警察に連絡しないと」
ふと思い出したように明宏が呟き、スマホを取り出す。

スマホはいつも制服のポケットに入れているから、運良く教室から持ち出すことができていた。
今教室へ戻ることはもうできないだろう。

明宏はすぐに110番に連絡を入れる。
けれど顔をしかめて「おかしいな」と、呟いた。