明宏はふたりへ向けてそう言い、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
画面が見えるように机に置くと、映画情報の動画が流れ始める。
「うわ、ホラー映画?」

しかめっ面をしたカオリが明宏を見てつぶやく。
「夏と言えばホラーだろ? 今回はゾンビものが上映されるんだってさ」
画面の中では肌がただれた死人たちが蘇って蠢き始めている。

ただの作り物だとわかっていても、千歳はそれを最後まで見ることができずに顔をそらした。
「で? これを見に行くつもり?」
「もちろん。千歳も行くだろ?」

その言葉に千歳はしかめっ面をして「冗談よしてよ。私は行かない」と左右に首を振った。
「なんで? 面白そうなのに」
「怖い映画は苦手なの。知ってるくせに」

「苦手でも楽しめると思ったんだけどなぁ」
明宏は残念そうに頭をかいている。