だから良かったのだ。
ご主人が久子になにかする前に、騒ぎに気がついた先輩女中が駆けつけてきてくれたのだ。

「久子大丈夫? なにもされてない?」
ご主人をおっぱらってから先輩女中が心配そうに声をかけてきてくれたけれど、久子はショックと恐怖でなにも返事ができなかったのだった。